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2013年10月19日

十五夜昔話し


十五夜昔話し



昔昔の満月の夜のことでございました
その日はたいそう夜空が澄み渡っており 薄く漂う雲一つなく 
昇る月は真珠の玉のように満々と輝いておりました

太陽の光を受けて反射する月明かりは晃晃(こうこう)と 
雲の糸が放射するが如くに その暈(かさ)の衣を惜しみなく大地に降り注いでおりました

その明るさはというと、それはもう、灯りいらずで道を足運ぶことが出来
屋根の赤瓦も鮮やかに その朱色が容易にわかる程でありました
家内を守るシーサーも 月の力を頂き 満面の笑みを浮かべ満足そうでありました

人々は満月に大変喜び敬い美しさを観月しようと
お餅、団子などをこしらえお月様にお供えして 満月の夜を楽しんでおりました

こちらのお金持ちの夫婦の家でも お餅をたいてお供えなどしておりました
旦那様は気前がよく 近所の者たちを家に招いては餅を振舞うなどしております
奥様はというと 大きな声では言えませんが 少しばかりケチで
“あぁ、餅を大きく作り過ぎた。もうちょっと小さくすればよかったのに。” などと
声にこそしませんが、心で舌打ちなどしておりました

満月も高く昇り始め 頭上真上に来たころでありましょうか
この家の戸を 叩く者がおりました
出迎えたのは あのケチな奥様でありました

「はい どちら様でしょう」 
また隣近所の者が訪ねてきたと思った奥様は その者を見て顔をしかめました

訪ね来た者の髪は白髪混じりのボサボサで 
その身成りといったら まあまあそれはそれはみすぼらしく
着物はあちこちほつれ破けているし 
何日も洗いにも出していないようで汚れています
きっと風呂にも長らく入っていないのではないでしょうか
素足は板のように硬そうです
その男が両手に割れかかった木の皿を差し出し 言いますには

「奥様、わたしはもう何日も食べておりません。どうか今夜の月の恵みに、供えた餅を分けてください」

“はぁ…物乞いだね” 口にこそ出しませんが、その者をみて奥様は心で舌打ちしました

「ちょっとお待ちよ、旦那様に訊いてくるからね」 奥様は旦那様に訊きにいきました

気前のよい旦那様はお客の相手をしながら言いました

「それは気の毒だ。この満月の夜に腹が満たされぬのはさぞかし辛かろう、
今宵は満月、誰でも満月の恵みに肖(あやか)れる というもの。
供えの餅を分けておやり。」

「だって、お客でもあるまいに。どうせ毎日何もせずぶぅらぶぅらして
楽して食べ物にありつこうって考えですよ、きっと」

「こら、そういうことを口にしてはいかん、
何も好きで生まれた時からそうである人はいないのだから。
人には何かしらの事情があるというものだ。
端(はな)から決めつけてはいけないよ。さ、待たせるといけない、
供えの餅をウサンデーして分けておやり。」

大きな声では言えませんが、少しばかりケチな奥様は 
頬をぷくぅっと膨らませながら餅をとりにいきました
廊下を歩く足音までも どんどんどんと、先程より音が増しています

玄関では あのみすぼらしい老人が木の皿を胸に待っておりました

「はい、供えの餅だよ、持っておいき。」 奥様は分けて持ってきた餅をいくつか出しました

「ほほぉぉぉ…」 とは、みすぼらしい老人の発した声でございます

なんということでしょう、供えの餅は全て半分に切り取られて 
嵩(かさ)が減らされていたのであります
その姿はまるで半月のようでございます
流石にケチな奥様です 

「どうしたの、お餅をどうぞ。」 奥様は何食わぬ顔で申します

すると老人は 今までうつむいていた顔をスッとあげ、
奥様の眼を優しく見据えると

「十五夜ぬ 月(ちち)ぬん 肩割(かたわり)ぬ あゆみ」 
(十五夜の月が半分にかけていることがあろうか)

と歌ったのであります

十五夜昔話し

それを聴いた奥様の驚き様といったら・・・
まさに度肝を抜かれたようでございました
自分が心内で小馬鹿にしておりましたみすぼらしい老人が
暗に示した歌をうたってよこしたのであります

己の行なったことを思うと 耳は真っ赤になり
喉元は締められるように窮屈になり
恥ずかしくなりました

そして慌てて台所へ戻っていきました

老人は木の皿を両手に持ち 静かに佇んでおります

やがて奥様がそそくさと参りまして 極(きま)り悪そうに老人に餅を渡しました

そして こう歌い返しました

「雲に隠りてぃ 今(なま)ど んじゆる」
(雲に隠れていて 今が 出てきました《満月になりました》)


老人の木の皿には まぁるい満月のような大きな餅が数個包まれておりました


老人は目を細め、頂いた満月のようにまるまるとした大きなお餅をみました
そして大事そうに 木の器をさすりさすり

「にふぇでぇびる…」 
老人は丁寧にお辞儀をし
その家を後にしたそうでございます

その夜から奥様は どんな人に会っても胸内で舌打ちすることを
しなくなったそうであります

空には それはそれは雅な満月が輝き 
晃晃と光の衣を大地に注ぐ 
素晴らしき十五夜のことでございました


十五夜昔話し




*emiがまだ十代の頃、
父から話してきかされた十五夜の物語です
内容は大まかに同じく、脚色してお話にしております

今宵の満月の恵みが全ての命に ありますことを
お父さんも観てるかな。。。
“空から観るとちびらぁさんどぉ~”って言ってそう。。。(*´~`*)

be acob....



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